2011/05/05

ひたちなか市の定時降下物データと環境放射線量率の関係
Relationship between the nuclear fallout data and the environmental radiation dose rate data at Hitachinaka City.

カテゴリー:福島第一原発トラブル
タイトル:ひたちなか市の定時降下物データと環境放射線量率の関係
概要:文科省から発表の「定時降下物のモニタリングデータ(3月18日から測定)」ではひたちなか市の値が3月20日 93GBq/km23月21日 85GBq/km23月22日 27GBq/km2 と異常に大きな値を示していた。

その後、急激に減少し最近では0~数十MBq/km2まで低下している。
しかしながら、この値と、空間の放射線量を示す「環境放射線量率」のデータの関係が今一分からなかった。

そこで、降下物の半減期を考慮した累積値を計算し環境放射線量率と比較したところ、時定数やベースラインの違いなどがあるが、大まかに見てほぼ同じカーブを描くことが分かった。


これは今までも言われていたことだが、3月20日から22日 にかけて降下した放射性物質が地表に積もり、それに従って線量率が増えた後、複数の核種の半減期の組み合わせによるカーブを描いて漸減していることを示している。


こまかい検討は別途行うとして、ひとまずは、つじつまが合ったということにしておく。



注1)本記事は5月5日の早朝に投稿したが、寝ぼけ眼で書いたので説明不足のところがある。そのうち、補正する予定。
また、一部、数値の間違い ― 
MBq/km2(1平方キロメートルあたりのメガベクレル)とGBq/km2(1平方キロメートルあたりのギガベクレル、メガの1000倍)を混同している箇所 ― があったので、訂正した。[5月5日11時30分追記]


データ出典
定時降下物は下記サイトのデータを使用した。

■文部科学省 定時降下物のモニタリング
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305495.htm
■同データを電子データ化したサイト
https://spreadsheets.google.com/spreadsheet/pub?hl=en&key=0AjgQ0pwrXV8YdGJORHAzdi1qMlFldUMwRkl4V3VfN0E&hl=en&gid=0
ひたちなか市の環境放射線量率は下記のデータを使用した。
■茨城県環境放射線監視センター 空間線量率・風向・風速 測定結果・一覧
http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/present/result01.html
また、降水量のデータは下記を利用した。
■気象庁 アメダス 過去の気象データ検索
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

定期降下物は3月18日から測定が開始され、当初 I-131および Cs-137の放射能が測定されていた。また、4月24日からは Cs-134の分析も開始された。

それによると、I-131で、3月20日 93GBq/km2, 3月21日 85GBq/km2, 3月22日 27GBq/km2 と異常に大きな値を示していた。

その後、急激に減少し最近では0~数十MBq/km2まで低下している。

しかしながら、この値と、空間の放射線量を示す「環境放射線量率」のデータの関係が今一分からなかった。

そこで、定期降下物のデータと環境放射線量率を同じグラフにプロットしてみた。

ただし、定期降下物のデータがいつ、どこで、何回測定しているのかは未確認(メールで問い合わせたが返事が無く、それ以降催促もしていない)のため、比較する空間線量率のデータはひたちなか市の空間放射線モニタリング局(馬渡、常陸那珂、阿字ヶ浦、堀口、佐和、柳沢)の平均値を採用することとした。

また、降水量に関してはひたちなかのデータがないため、水戸市のデータで代用することとした。

図1 にひたちなか市の定期降下物と環境線量率の関係を示す(縦軸の単位を間違っていたので、グラフを差し替えた 2011/6/17)。


図1 定期降下物と環境線量率



図1 を見ると以下のことが分かる。
(1) 雨が降ると降下物の量も増える。ただし、4月の中ごろからは雨が降ってもさほど降下物が増えなくなった。

(2) 3月20日には雨が降っていないのに降下物が増えている。これはたまたまこの時に放射能雲が上空にあり、風の影響で舞い降りたものと考えられる。そこに21日になって雨が降り出し、大量の降下物を降らせることになった。

それが地表に積もり、環境放射線量率として観測されているのであろう。
しかしながら、図1からだけではその関係は灘分からない。

そこで、降下物(I-131, Cs-134, Cs-144137)の種類ごとに半減期を考慮した累積値を求めた。
図 2 定期降下物の半減期を考慮した放射能の総量と環境放射線

すると、大まかには降下物が自己の半減期に従い放射能が漸減するカーブと環境放射線のトレンドデータの減衰カーブは概ね一致していることが分かる。
今日はこの辺にしておき、もう少し細かい検討は次回に回すとしよう。

参考 (2011/6/17追加)

降下物による土壌汚染の度合いによる外部被曝の影響を評価するためには、単位面積あたりのベクレル数と単位時間当たりの線量を換算する必要がある。

そのために、一般には下記の値が使われるらしい。


(Sv/h per Bq/cm2)
I-131: 1.3E-06
Cs-134: 5.4E-06
Cs-137+Ba-137m: 2.1E-06

ひたちなか市のデータをもう少し詳しく分析すると、この換算係数の妥当性も検証できそうである。

出典


(1) IAEA (国際原子力機関)
IAEA-TECDOC-1162 (2000/8)「放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順」99ページ
http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1162_jp.pdf

(2) DTRA (アメリカ国防脅威削減局)
DTRA-TR-07-5 (2007/5) Bounding Analysis of Effects of Fractionation of Radionuclides in Fallout on Estimation of Doses to Atomic Veterans
Table A.5 (A-10ページ)
www.fas.org/irp/agency/dod/dtra/doses.pdf

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